研究概要 |
ヒト食道扁平上皮癌より樹立した23細胞株について、c-myc,c-erbB,染色体11q13領域の増幅を中心として検索を行い、以下の知見を得た。11q13の増幅は9株に、c-myc増幅は5株、erbB増幅の3株にみられた。c-myc増幅は高分化型に有意に高頻度でみられ、常に他の癌遺伝子の同時増幅を伴っていた。cyclin D1遺伝子増幅は9株で認め、そのうち1株は発現が全く検知できなかった。以上から、食道癌の高分化型と低分化型では発癌に関して一連の流れがあるのではなく、各々異なった遺伝子変化によるものと考えられる。cyclin D1は染色体11q13部位の増幅の標的遺伝子の候補ではあるが確定的でないことも明らかである。また、c-mycと異なり、cyclin D1ではメチル化が遺伝子発現の抑制に関与していないことも明らかとなった。さらに、11q13領域にマップされているGST-P遺伝子の発現も検討したが、11q13領域の増幅とは必ずしも相関しなかった。 未知の標的増幅遺伝子のクローニングに、当初考えていた、In-gel法とPCRで作製したcDNAライブラリーを組み合わせた方法では、増幅されるmRNAに片寄りがあるため、必ずしも増幅単位の標的遺伝子の検知に結びつかないことが判明した。逆転写にランダムプライミングではなく、オリゴdTを用いるなど、PCRのプライマーを工夫してもこれらは改善されなかった。
|