研究概要 |
IL-1は炎症反応の初期に産生され炎症の導入に大きな役割を果たしている。しかし、このIL-1抑制因子であるIL-1receptor antagonist(IL-1ra)も炎症の初期から大量に産生されていることを知り、このプロジェクトでその炎症制御に関する意義を検討した。ウサギのLPS膝関節炎について検索し、以下の結論を得た。 1)この関節炎においてIL-1βの産生は6時間でピークとなり、その量は11.3±5.1fmol/関節である。一方、IL-1raの産生は9時間でピークとなり、その量は2,121.8±824.1fmol/関節で、IL-1raの産生量はモル比でIL-1の187倍も産生されている。2)IL-1βとIL-1raのrypeIレセプター(機能レセプター)への結合定数はほぼ等しい(Kd=350nM)。3)in vitroでIL-1βの活性を完全に阻止するのに必要なIL-1raの量はモル比で100倍を要する。4)in vivoでIL-1β2fmolにより誘導される白血球浸潤を指標にし、これをを完全に阻止するのに必要なIL-1raの量はモル比で10,000倍を要する。5)上述のLPS膝関節炎における白血球浸潤の抑制はIL-1ra5.75pmolから検出されはじめ、575pmolで最も強い抑制が見られ、その抑制は70%に達するが、これ以上IL-1raの量を増やしても抑制は強くならない。6)このLPS炎症の白血球浸潤はIL-1raとともにTNFαに対する中和抗体を用いることにより達成され、その抑制は90%以上に達する。7)各種細胞上のtype I IL-1receptorの数は細胞の種類によって異なるが10^2〜10^3のレベルである。従って、IL-1βの作用は細胞上の極めて僅かのレセプターと結合することにより生物作用を発揮できること。すなわち、炎症の場ではその初期からIL-1βという活性化因子と同時に大量のIL-1raを産生し、IL-1βの作用を局部化するような機構が存在していることを明らかにした。
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