研究概要 |
C型肝炎ウイルスは未だ適当なウイルス感染増殖系がないために、中和抗体の検出が極めて困難な状態にある。また患者の病態、感染動態を見る限り、中和抗体がヒトでは誘導され難いか、またはウイルスの高変異によるescape mutantの出現によつてウイルスが中和抗体からうまく逃れているため、持続感染が成立すると考えられる。そこで、本研究では他種の動物を免疫することにより、中和抗体をヒト以外から見いだすことを目的として、以下に示す実験を行った。 まず中和抗体の候補として、2つのエンベロープ糖蛋白E1とE2に対する抗体を作製した。昆虫細胞で発現させた組み換えエンベロープ糖蛋白E1,E2およびhypevariable region(HVR)1ペプチドを、種々の系統のマウスおよびチンパンジーに免疫し抗血清を得た。E1,E2で免疫したマウスおよびチンパンジーには、抗E1,抗E2抗体が高抗体価で誘導され、複数のlinearエピトープに対する抗体が検出された。これらは、HCV自然感染経過における患者血清やHCV感染実験におけるチンパンジー血清には見られない、強い抗体responseであった。ウイルスcaptureアッセイは、これらの抗体とHCVを反応後、二次抗体を加え、免疫沈降分画と上清に存在するHCVをRT-PCRにて半定量した。これら免疫抗血清の中にウイルスを一部captureできる抗体が見出された。抗HVR1抗体よりも抗E1抗体、抗E2抗体の方が、capture活性が検出されやすい傾向にあった。しかし、エンベロープ糖蛋白E1,E2およびHVR1ペプチドを免疫したチンパンジーでは、C型肝炎ウイルスの感染を防御し得なかった。発症の軽減及び早期化が観察されたことから、免疫による病態抑制効果は期待できるものと思われる。HVR1配列に拘束されない中和抗体の検索は、中和抗体とウイルスcapture抗体との関連を明らかにするとともに、チンパンジーを用いた中和抗体アッセイで検索していく必要がある。
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