細胞内寄生菌のマクロファージによる殺菌からのエスケープを可能にする病原因子が、感染宿主における細胞性免疫の誘導に関与する機構を解明し、さらに抗原特異的T細胞による免疫防御発現と組織傷害発現を、サイトカイン産性能を中心としたT細胞の機能や、その主要識別抗原の違いによって分離的に解析することを本研究の目的とした。マウスを用いた実験的感染モデルから、以下のような研究成果が得られた。 1.リステリアではhlyAにコードされるLLOがエスケープに重要である。LLOは膜傷害性蛋白であるが、同時にマクロファージに作用して、IL-1などのサイトカイン産生を誘導する。2.リステリアではhlyAを発現する菌株のみが細胞性免疫を誘導できる。これはLLOにより誘導される各種サイトカイン、とくにIL-1αおよびIFN-γがT細胞の機能分化を促進するためである。3.誘導された感染防御免疫は主にTh1タイプのCD4^+T細胞により担われ、その最も重要な役割は抗原特異的に多量のIFN-γを産生することであり、IFN-γ産生能の低いCD4^+細胞では遅延型過敏反応は発現しても防御免疫を発現できない。4.IFN-γ産生性CD4^+T細胞の識別抗原は、リステリアでは分子量の異なる幅広い抗原であるが、BCGでは18-20kDaの蛋白である。結核患者末梢リンパ球もこの18kDa抗原によく反応してIFN-γを産生した。5.リステリアのモデルでは、生菌免疫によって誘導されるCD8^+T細胞にも若干の感染防御能がみられたが、細胞移入ではむしろ肝細胞傷害活性がみられ、この細胞が産生するTNFが組織傷害的に作用することが考えられた。6.感染早期に非特異的に産生されるサイトカインのうち、特にNK細胞由来のIFN-γは、マクロファージの殺菌に重要なNOを作るiNOSの発現誘導に不可欠で、しかも生菌特有であった。
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