研究概要 |
我々はPorphyromonas gingivalis由来のLPSはその生物学的活性が腸内細菌由来のLPSと異なり,LPS低応答性のC3H/HeJマウスのリンパ球,マクロファージに対して刺激反応を明らかに示すことを報告した。しかし,P.gingivalisのLPSの細胞内のシグナル伝達機構に関しては明らかにはされていない。本研究は,P.gingivalisのLPS刺激によるマウスB細胞内チロシンリン酸化反応についてE.coli由来のLPSと比較検討を行ったものである。 B細胞は,C3H/HeN,C3H/HeJマウス脾細胞の単個浮遊液をSephadex G-10カラムおよび抗マウス免疫グロブリン抗体によるPanning法を用いて分離したものを実験に供した。これらのB細胞を用いて上記両LPS刺激後の細胞内チロシンリン酸化反応について検討した結果,P.gingivalisのLPS刺激では特異的にチロシン残基がリン酸化される数種の基質蛋白が存在することが明らかとなった。さらにこれらの基質蛋白はいずれのマウス脾臓B細胞にも共通して存在し,超音波処理により破壊したB細胞の膜画分中に局在することがつよく示唆された。E.coliのLPS刺激後はC3H/HeNマウスでは同様に特異的リン酸化基質蛋白のバンドが確認されたが,C3H/HeJマウスではhouse keepingと比較し新たなバンドは検出されず,細胞内のシグナル伝達が行われていないことが示唆された。またP.gingivalis LPS刺激後認められたバンドは,E.coli LPS刺激後C3H/HeNマウスで認められたバンドと一致することから,異なるLPS刺激によっても細胞内では同一の経路を介してシグナル伝達が行われていることが推測される。
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