研究概要 |
マスウ腹腔マクロファージをin Vitroで培養し、Legionella pneumophila,SalmonllaあるいはMycobacterium bovis BCGを感染させると、細胞内のある特定な蛋白が速やかに多数リン酸化されることを見いだした。初年度はS.typhi-muriumを感染させた際の感染初期に起こる蛋白リン酸化反応について、詳細な研究を行なつた。 無刺激のマクロファージにも常にある程度の細胞内蛋白リン酸化反応が観察される。S.typhimuriumの生菌を感染させようと、あるいは加熱死菌や紫外線照射死菌を投与しようと、菌体にはエンドトキシン(LPS)が含まれるので、LPS刺激に基づく際に出現するとおなじ多数のイン酸化蛋白が現れる。しかし、生菌感染の場合、死菌やLPS投与とは異なった感染特有な蛋白リン酸化反応が観察される。即ち、感染後30分〜6時間の間に85,72,35,30,23 kDaの蛋白の著しいリン酸化が起こった。これらの蛋白のうち、35,30,23 kDaのリン酸化蛋白は生菌自体にも含まれており、その多くは菌の代謝による蛋白と推定できる。感染細胞をTri-ton-X-100を含む溶液で溶解し、感染菌を含む画分と含まない画分とに分けると、85と72kDaのリン酸化蛋白は感染菌を含まない画分に認められ、これらのリン酸化蛋白がマクロファージ由来であることが明らかにされた。これらのリン酸化蛋白は、Escherichia coli,L.pneumophila,Pseudomonas aeruginosa,Staphy-lococcus aureus,Listeria monocytogenesを感染させたのでは生じてこない。 この研究は、LPSや死菌による刺激とは別に、Salmonella生菌感染特有な蛋白リン酸化反応が、マクロファージ内に起こることを明らかにした。
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