研究概要 |
マウス腹腔マクロファージをin vitroで培養し、SalmonellaやMycobacterium bovis BCGを感染させると、細胞内のある特定な蛋白が速やかに多数リン酸化されることを見いだした。Salmonella感染特有なリン酸化蛋白を死菌やLPS(エンドトキシン)の投与や他の菌の感染に際して現れるそれらと比較、解析し、次のような事柄を明らかにした。 1.Salmonella生菌感染ではこの菌の死菌やエンドトキシン(LPS)投与の際に認められる特有な多数のリン酸化蛋白の出現と共に、それとは異なる生菌感染に特異的な種類の蛋白質のリン酸化が認められる。特に分子量85kDa・72kDaの蛋白が、強いリン酸化を受ける。2.これらの蛋白リン酸化は、サイトカラシンD添加により、菌の貧食をかなり抑制しても、リン酸化は殆ど抑制されない。また、クロラムフェニコール及びナリジキシ酸により菌の増殖を止めると蛋白リン酸化が強く抑制さた。すなわち、貧食よりも細胞内での菌の増殖がリン酸化誘導の刺激となることが示された。3.これらのリン酸化蛋白はS.typhimuriumやS.enteritidis感染で現れるが、BCG,Legionella pneumophila,Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosa,Listeria monocytogenes感染の際現れるそれとは明らかに分子量が異なる。4.Mycobacte-rium intracellulare(MI)感染についても検討した。しかし、MIは遅延発育菌である為か、我々の行っている^<32>P標識リン酸化法で検出可能な反応時間内では、顕著なリン酸化の亢進は観察されない。5.LPS刺激で生じるリン酸化蛋白、特にpp65についてもアミノ酸配列を解析した。6.Salmonella感染やそのLPSで90kDaの蛋白(p90)のチロシン残基がリン酸化されるのを見出した。これは感染後1分以内に起こり、PMAなどの刺激では起こらないので、感染との関係が示唆される。
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