研究課題/領域番号 |
05454198
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中村 喜代人 山形大学, 医学部, 教授 (00125775)
|
研究分担者 |
村木 靖 山形大学, 医学部, 助手 (00241688)
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 講師 (90229245)
|
キーワード | C型インフルエンザウイルス / ヘムアグルチニン・エステラーゼ / 分子系統樹 |
研究概要 |
30株のC型ウイルスのヘムアグルチニン・エステラーゼ(HE)遺伝子の塩基配列に基づく分子系統樹が完成し、以下の結論を得た。 1.1964年以降に本邦で分離されたC型ウイルスは4つの系統(山形/81系統、青森/74系統、愛知/81系統、奈良/82系統)にグループ分けされた。しかし青森/74系統は1977年以来分離されていないので、現在ではそれ以外の3つの系統が共存していると思われる。2.1960年代以降海外で分離された株も上記3系統のいずれかに帰属する。従来C型は土着型の代表的なウイルスとされていたが、その行動範囲は予想をするかに越えた広いものであることが明らかになったことになる。3.C型ウイルスでは変異の蓄積が起こっていないとするのが定説となっていた。ところが1971年から1988年にかけて分離された山形/81系統株間に、時間の経過に対応して変異が蓄積されていることが明らかになった。この知見に基づき、HE遺伝子の進化速度を算定したところ、0.509×10^<-3>/塩基置換数/部位/年であった。この値はA型の1/8〜1/9に、B型の1/2〜1/3に相当し、C型がきわめてゆっくりと進化していることが判明した。4.HE蛋白の中和エピトープはN端から180〜220番めに密集している。この領域のアミノ酸配列は、別の系統に所属する株間では大きく異なっていたが、同じ系統の株間では殆ど違いが認められなかった。従って、系統に分かれるまでは、抗体の選択圧が進化に重要な役割を果たしたものと思われるが、系統に分かれたあとでは進化に寄与していないものと推測された。後者の場合でも、おそらくは抗体による選択圧をうけているのであろうが、機能的拘束のために変化する余裕を失ってしまっているのであろう。
|