研究概要 |
MRL-lpr/lpr(MRL/lpr)マウスは自己免疫疾患モデルマウスであり、ヒトのSLEやリウマチ性関節炎によく似た病態を呈する。このマウスの主たる免疫異常の1つにTcRαβ^+CD4^-8^-リンパ球の異常増殖を伴った末梢リンパ節の腫脹が観察される。われわれは、この異常リンパ球の分化・増殖が肝で起こり、末梢に流出してリンパ節などに蓄積することを明らかにした。本研究は、この異常T細胞の増殖・分化の場である肝においていかなるサイトカインが産生され、リンパ球の増殖や肝類洞内皮細胞上に誘導される接着分子とどのように関わっているのかを解析し、以下のことが明らかになった。1.肝には、他の免疫臓器とは異なり、intermediate TcRを保有するT細胞が存在しており、胸腺非依存性に分化したものであることを明らかにし、これらのT細胞が胸腺由来のT細胞とは異なる接着分子群(CD44^<hi>,LFA-1^<hi>,ICAM-1^+,Mel-14^-)を発現していることを明らかにした。2.肝由来のT細胞は、NK細胞特異的表面抗原であるNK1.1を発現していることを明らかにした。3.MRL/lprマウスの肝リンパ球は自発性にIL-6を産生し、これにより肝類洞内皮細胞にICAM-1を誘導することを明らかにした。MRL/lprマウスの肝には、正常マウスの10倍のリンパ球が浸潤しており、10倍の自発増殖を行っているが、これらの現象にIL-6産生とICAM-1発現が関与している可能性が示唆された。4.NZB/WF_1マウスでも自己免疫発症に重要な役割を担っているCD5^+B細胞が、発症に伴って肝で特異的に増加することを見い出した。要約すると、MRL/lprマウスの肝はTcRαβ^+CD4^-8^-リンパ球が増殖する主たる場であり、IL-6の産生とこのサイトカインによる肝類洞内皮細胞でのICAM-1の発現誘導が、このマウスにおける自己免疫疾患発症のメカニズムの解明に重要であるものと思われる。さらに、これらの抗体の生体内投与により、自己免疫疾患の発症を抑制する可能性が考えられる。
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