前年までの研究において、H-2^K由来のマウス系統で認められる補体第4成分、C4、の低産生は、マウスのレトロポゾンの一種であるB2反復配列がC4遺伝子の第13イントロンに挿入されてRNAのプロセシングの異常が引き起こされるためであることが証明された。さらに、B2反復配列挿入C4遺伝子の発現が、組織特異的にもコントロールされていることを見い出した。すなわち肝細胞とは異なり、腹腔マクロファージではH-2^K由来のマウスからのものでもC4遺伝子の転写産物は正常にプロセスされ、そのレベルも正常である。したがって、スプライス部位の選択はC4の二つの主要産生細胞の間でも異なっていることになる。その機構を明らかにするために、リコンビナントC4遺伝子を作り、マウスマクロファージ由来の細胞株に導入し、産生されるC4mRNAを逆転写-PCRとRNase protection法によって分析した。予想と異なって、これまで調べた5種の細胞株ではいずれも、B2反復配列が挿入されたC4遺伝子およびB2反復配列挿入リコンビナントC4遺伝子が導入された場合には、異常なC4mRNAのみが作られ、in vivoの現象の再現はできなかった。原因として、遺伝子導入がTransientなトランスフェクションの系で行われたために、in vivoでのスプライシングを反映しにくくなっていることが考えられ、現在Permanentなトランスフェクションの系での実験を試みている。
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