研究概要 |
前年度にひき続き,マウスの造血環境で生成するインバリアントなT細胞抗原レセプター(TCR)(Vα4/Vβ2)を発現するユニークなT細胞亜群(CD3+4-8-)の、分化発生様式および認識抗原(リガンド)について解折を進め,以下の結果を得た。 (1)インバリアント(Vα4/Vβ2)T細胞の発生と分化:インバリアントTCRのα,β各鎖のcDNA塩基配列をもとにPCR法にて,同TCRを発現するT細胞の,個定発生を解析した。その結果,同インバリアントTCRmRNAは,胎生期10〜14日迄の肝臓において逆択的に発現され,それ以降では,肝,胸腺含め,急速に消失することがわかった。他方,通常のTCRmRNAは14,15日以降の胸腺および肝ではじめて検出可能であった。このことから,インバリアントTCRは,胸腺組織の発生に先行して,造血組織において,胎生初期に選択的に発現することが示された。 (2)インバリアントTCRのリガンドとしての4F2抗原の発現様式:4F2抗原H鎖の個体発生における発現様式を,ノーザン法およびウェスタン法にて,mRNAと蛋白の両面より解析した。その結果,4F2抗原は,10日以降の胎生諸臓器にすでに発現されており,その後徐々に精巣や脳に限局され,生後は専ら,この両組織に限局されることが示された。また新たに同L鎖のモノクローナル抗体を得,同等の結果を得た。 以上の結果から,(Vβ2/Vの4)インバリアントTCRは,4F2抗原といわばセットとして胎生初期に発現されることがわかり,発生過程で何らかの重要な役割を担っていると考えられた。
|