自己免疫発症における自己反応性T細胞、MHCクラスII抗原、自己抗原の役割を明かにするために、I型糖尿病モデルNODマウスを用いて以下の研究を行った。まず、NODマウスの自己免疫成立に関わる自己抗原を同定することを目的に、膵島反応性CD4 T細胞クローンの認識する膵島抗原の解析を行った。その結果、5種のT細胞クローンのうち少なくとも2種のクローンは異なった抗原エピトープを認識することを明かにした。また、膵島β細胞の破壊機構を解析するために、NODマウス由来の膵島反応性CD4 T細胞クローンをNOD-scidマウスに移入し、糖尿病の誘導を試みた。異なるT細胞レセプターを発現する4種のT細胞クローンを各々単独で移入した場合、膵島炎β細胞破壊を誘導できたが、糖尿病には至らなかった。しかし、これらT細胞クローンを混合して移入したところ、非常に強い膵島炎と糖尿病を効率よく誘導できた。以上の結果は、効率のよい糖尿病発症には、複数の自己抗原エピトープを認識する多様な自己反応性T細胞集団が必要である可能性を示している。又最近、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)がNODに糖尿病発症の原因抗体である可能性を示す報告がなされている。そこで、GADがI型糖尿病の引き金を引くか否かを解析するためにGADトランスジェニックマウスを作製した。
|