Bリンパ球の分化・発達における抗原特異的受容体の構造と発現の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454209
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 阪口 薫雄 鳥取大学, 医学部, 教授 (70192086)
• キーワード: B細胞 / 抗原レセプター / MB-1 / シグナル伝達 / アポトーシス / トレランス

研究概要

Bリンパ球は、同じように抗原の刺激を受けても分化・成熟のステージが異なれば全く異なる反応をする。このメカニズムを明らかにするため、抗原受容体コンプレックスに関する分子の解析を更に進めた。レセプターと機能的に関連している分子p160を見出し、この分子に対するモノクローナル抗体を作成した。本年度は、このp160のB細胞増殖における役割を明らかにした。p160分子は、抗原レセプターからのシグナル伝達により結合分子が著しく変化し、殊に成熟B細胞では、この分子群の中にチロシンキナーゼを含むリン酸化活性の上昇が確認された。一方、未熟B細胞では、逆にこのリン酸化活性が著しく抑制され、成熟B細胞と未熟B細胞の増殖の違いを示す新しい発見となった。即ち、成熟B細胞に抗原の刺激が入るとそのB細胞内にCa流入を始めチロシンキナーゼ活性化のシグナル伝達が開始され、その結果B細胞は増殖する。しかし、未熟B細胞では、同じように抗原の刺激が与えられても、その細胞内にほぼ同様のシグナル伝達が生じても、逆にその細胞は増殖が抑制され、死滅する。この変化はプログラム死の形態をとる。p160分子は、この両者の違いを分子レベルで解き明かす第一歩となるものと確信している。現在、この分子の作用メカニズムがどのような分子や遺伝子産物によるのか、また、このp160分子がどのような構造をしているのか、遺伝子クローニングへと準備を急いでいる。

研究成果

• [文献書誌] Melchers,F.: "The surrogate light chain in B cell development." Immunol.Today. 14. 60-68 (1993)
• [文献書誌] Matsuo,T.: "Crosslinking of B cell receptor-related MB-1 molecule induces the protein tyrosine phosphorylation in early B lineage cells." J.Immunol.150. 3766-3775 (1993)
• [文献書誌] Ishihara,K.: "Multiple B29 containing complexes on murine B lymphocytes.Common and stage restricted Ig-associated polypeptide chains." J.Immunol.150. 2253-2262 (1993)
• [文献書誌] Sakaguchi,N.: "Immunoglobulin receptor (IgR)-associated molecules." Advances in Immunology. 54. 337-392 (1993)
• [文献書誌] Kuwahara,K.: "Induction of tyrosine phosphorylation in human B lineage cells by crosslinking MB-1 molecule of B cell receptor-related heterodimer complex." Biochem.Biophys.Res.Commun.197. 1563-1569 (1993)
• [文献書誌] Kuwahara,K.: "Identification of a 52-kDa molecule (p52) co-precipitated with the immunoglobulin receptor-related MB-1 protein which is inducibly phosphorylated by the stimulation with phorbol myristate acetate" J.Immunol.(印刷中).
• [文献書誌] Inui,S.: "Signal transduction through B cell specific molecule MB-1 in early lymphoid progenitor cells." Leucocyte Typing V White Cell Differentiation Antigens. (印刷中).