造血に必要な組織構築に関する研究モデルを作成するために、1)全ての造血細胞の増殖に必須のKL遺伝子の遺伝子調節領域をinvitroで検討し、2)調節領域35bp、2kb、6kb、10kbをLacZ遺伝子につないだコンストラクトを導入したトランスジェニックマウスを作成した。全部で22系統の遺伝子導入マウスを作成したが、このうち造血組織で発現がみられたのは2kb上流を導入した1系統だけであり、またこの系統も骨髄では骨芽細胞のみに発現しており、胎児肝での発現は皆無であった。以上の結果は、毛根、腸管、脳でのKL遺伝子発現領域と、造血での発現領域がことなっていることを示唆すると共に、我々の最初の計画では造血組織構築研究のためのモデルマウス作成は困難であることも示した。 一方、造血細胞そのものを検出するためのモノクローナル抗体作成は着々と進んだ。研究発足以前に作成していた抗c-kitモノクローナル抗体に加えて、初年度には抗IL-7R、2年目には抗c-fms、抗flk2モノクローナル抗体を作成でき、造血細胞を増殖因子受容体を指標に同定していくための体制を整えた。抗c-kit抗体、抗IL-7R抗体は既にリンパ球初期分化段階のマーカーとして利用されるようになっている。この方向の研究から、東北大学の菅村教授との共同研究で伴性複合性免疫不全の病態にIL-7のシグナナルが重要な働きを演じていることなどが明らかになった。15EA03:このように、造血細胞そのものの検出や機能についての研究は進んだ一方、造血組織の構築に関する研究を進めて行くために同じくらい重要な支持細胞側の検出方法は、2年間の研究によって進歩しないまま終わってしまった。本研究での反省を踏まえて、この問題を解決する新たな戦略を模索していきたい。
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