研究概要 |
リンパ球ホ-ミングの最も重要な段階であるリンパ球のリンパ節高内皮細胞(HEV)への接着を司るL-セレクチンとそのリガンドについて主に研究をすすめた。 その結果、次のようなことが明らかになった。まず、(1)L-セレクチンにはCD34,GlyCAM‐1などの既知のリガンドの他に、異なる分子サイズをもつ160kDaの糖蛋白質が新しいリガンドとして存在する、(2)糖鎖合成阻害剤を用いて解析からこの160kDa蛋白質へのL-セレクチンの結合はO型糖鎖を介する、(3)160kDa蛋白質へのL-セレクチンの結合はカルシウムイオン依存性であり、レクチンドメインへのリガンド結合を阻害する抗L-セレクチン中和抗体によりその結合が阻害されることから、このリガンドはCD34、GlyCAM‐1と同様の部位に結合すると考えられた。現在、この分子の大量精製を行ない、そのアミノ酸配列の同定を試みている。これとは別に、L-セレクチンを介して細胞内にシグナルが伝達されるかについて解析した。その結果、L-セレクチンに対するアゴニスティック抗体を用いることにより、細胞内カルシウムイオンの上昇が見られることが明らかになった。しかし、上昇のパターンは抗原刺激などで見られる場合とは大きく異なり、きわめて緩徐かつ持続的であることが判った。ただ、これがL-セレクチンを介した刺激に特有なことなのか、あるいは接着分子に共通に見られることなのかについては不明である。今後さらに解析を続ける予定である。
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