研究概要 |
本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。一方、リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)はDNA合成に必要なデオキシリボヌクレオチドを産生している酵素であり、RNR1,2,3によりコードされているが、RNR3はDNA損傷時にのみ、顕著に誘導される。従って、RNR3の誘導を検出することにより、DNA損傷の有無を知ることができると考えられる。RNR3のプロモーター領域にlacZ遺伝子を繋げたレポータープラスミドを酵母に導入し、RNR3の誘導をβ-ガラクトシダーゼの活性で定量できる方法を開発した。DNAに損傷を与える物質である4NQO,HUでRNR3mRNAが誘導されたが、2-アミノフルオレン(2-AF)では誘導されなかった、P4501A1を導入した酵母においては、2-AF曝露により、RNR3mRNAの誘導が検出された。従って、2-AFの代謝物質によりRNR3mRNAが誘導されることがわかった。 さらに、RNR3-lacZのレポータープラスミドpYE3を作製した。4NQO曝露においては、P450の有無にかかわらず、β-ガラクトシダーゼ活性は曝露開始後、増加し4時間でプラトーになった。P450を発現している系における2-AF曝露においては、曝露開始6-8時間でβ-ガラクトシダーゼ活性はピークとなった。以上の結果から、今回構築した方法はDNA損傷を検出するうえで、簡便かつ有効な方法であると考えられた。
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