研究概要 |
本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。平成5年度においてはチトクロームP450が発癌物質の作成にどのように関与するかを検討した。酵母のプラスミドに外来のP-450遺伝子を組み込み、その外来P-450により化学物質を代謝させ、生成された代謝産物が酵母のDNAに付加物を生成するか否かを観察した。P-450の種類によって生成されたDNA付加物が異なり、代謝活性の相違により発癌可能性が異なることが推察された。これらの結果については、Experientia(vol.51,1995)に掲載の予定である。 一方、リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)はDNA合成に必要なデオキシリボヌクレチオドを産生している酵素であり、RNR1,2,3によりコードされているが、RNR3はDNA損傷時にのみ、顕著に誘導される。従って、RNR3の誘導を検出することにより、DNA損傷の有無を知ることができると考えられる。RNR3のプロモーター領域にlacZ遺伝子を繋げたレポータープラスミドを酵母に導入し、RNR3の誘導をβ-ガラクトシダーゼの活性で定量できる方法を開発した。RNR3-lacZのレポータープラスミドpYE3を作製した。4NQO曝露においては、P450の有無にかかわらず、β-ガラクトシダーゼ活性は曝露開始後、増加し4時間でプラトーになった。P450を発現している系における2-AF曝露においては、曝露開始6-8時間でβ-ガラクトシダーゼ活性はピークとなった。以上の結果から、今回構築した方法はDNA損傷を検出するうえで、簡便かつ有効な方法であると考えられた。
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