研究課題/領域番号 |
05454223
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 芳朗 東京大学, 医学部(医), 教授 (50175741)
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研究分担者 |
伴 信彦 東京大学, 医学部, 助手 (70251220)
甲斐 倫明 東京大学, 医学部, 助手 (10185697)
草間 朋子 東京大学, 医学部, 助教授 (50134523)
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キーワード | 上部消化管検査 / リスク-ベネフィット解析 / 実効線量 / TLD / 集団検診 |
研究概要 |
わが国では胃ガンおよび十二指腸ガンの発生率、死亡率が諸外国に比べて多いことから早い時期から胃癌検診が行われてきた。上部消化管検査のための二重造影法がわが国で開発されたこともあり、35〜40歳以上の成人を対象とした健康診断、人間ドックでは、X線による上部消化管検査がほとんどの事業所、医療機関で行われている。 上部消化管X線検査は、透視を伴う検査であるために、被検者によりX線の被ばく線量が大きく異なることが予想される。そこで、著者等は、人間ドックを実施している都内の5つの医療機関の協力を得て、個々の患者線量を測定・評価し、その結果を基にリスク評価を行い、X線検査のリスク-ベネフィット評価のための基礎情報を提供することとした。患者の線量は、身体表面に装着した4個のTLD(熱蛍光線量計)を用いて、体表面の吸収線量を実測した。臓器線量は、モンテカルロシミュレーションを用いて推定した。リスク評価は、ICRP(国際放射線防護委員会)の提示している発ガンの名目確率と生命表を用いて行った。線量評価の結果、エックス線上部消化管検査の際の皮膚線量は、8.9〜210mGyの間に分布しており、患者により1桁以上の違いがあることことが明らかとなった。また、臓器線量の一つである子宮線量(妊娠している場合は、胎児線量に相当する)は、0.3〜5.5mGyの間に分布していた。35歳以上の被検者に限って行われる場合は、プラスのベネフィットがあることが明らかであるが、特に訴えのない健常者を対象に行われるX線上部消化管検査の被ばく線量が患者、施設によって20倍以上異なると言うことは防護の最適化の余地が極めて大きいことを示唆している。
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