金属熱の発症機序を解明する目的で亜鉛を中心とした重金属、さらに金属キレート剤による肺胞マクロファージ及び好中球の活性化機序をスーパーオキシド産生を指標として細胞-内情報伝達機構の面から解析した。これらの貧食細胞からのスーパーオキシド産生刺激能は硫酸亜鉛(ZnSO4)<酸化亜鉛(ZnO)<水酸化亜鉛(Zn(OH2))の順に増強した。これら亜鉛及び亜鉛酸化物を認識する貧食細胞の細胞内情報伝達機構の違いとして次のことがわかった。亜鉛イオンに対しては、カルシュウム非依存性でプロテインキナーゼCの関与が少なく、スーパーオキシド由来ではない過酸化水素の発生が認められ、未知の細胞内情報伝達経路の関与が考えられた。酸化亜鉛に対しては、細胞外カルシウム非依存性で還元型グルタチオン(GSH)にプライミング減少による刺激作用の増強がみられ、チロシンキナーゼ型の受容体を介している可能性が示唆された。水酸化亜鉛に対しては、細胞外カルシウム依存性で細胞内への流入がみられプロテインキナーゼCの活性化が関与しており、粒子の貧食が主な機構であると思われた。これらのことより、亜鉛化合物の微妙な分子構造の違いを貧食細胞が認識できることがわかった。 水酸化亜鉛による好中球の活性化とNO(一酸化窒素)の関係では、産生されるNOを著名に減少させる作用を有しているが、これはスーパーオキシドとの反応によるものか又は直接吸着されことが考えられた。さらに白血球接着因子であるLAF-1は水酸化亜鉛による活性化には何ら関与を示さなかった。 その他、カドミウムと金属キレート剤エチルジチオカ-バメートに好中球活性化作用が認められ、ガドリニウムに活性化貧食細胞の抑制作用等も認められた。
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