研究概要 |
大気汚染等の環境条件が異なる地域にある大阪市内の3小学校、大阪府下の1小学校、宮崎県国富町にある6小学校の全学童(4,161名)を対象にAST-DLDの標準質問票を基に作成された質問項目に呼吸器以外のアレルギー症状を加えた調査票による呼吸器症状及びアレルギ症状の調査、呼吸機能検査及び保護者の承諾を得られた学童について、血清中の非特異的IgE、特異的IgE(杉)検査を行った。 調査票の回収数は4,122名(99.1%)、血液検査受診数は3,059名(74.2%)であった。調査票による有症率は全対象者では男子5.3%、女子3.6%と男子の方が高率であり、また対象校別にみると大阪市内で大気汚染濃度が最も高い小学校(NO_2:年平均33ppb)で6.3%、最も低い国富町(NO_2:年平均5ppb)で3.5%となり、大気汚染濃度の高い地域の学童ほど有症率が高率であった。しかし、喘息症状がある者を除いた鼻アレルギー症状有症率は男子で28.9%、女子22.2%と喘息症状有症率より高く、また学校別にみると、最も高率であったのは大阪府下小学校(29.0%)であり、最も低いのは大阪市内小学校(24.4%)であり大気汚染濃度の高い地区で有症率が高率であると結果は得られなかった。 血清Igの陽性率(男女平均で27.2%)は学校間に差はみられなかったことから学校間の喘息有症率の差は個体の要因の学校間に差にヨるものでなく大気汚染の差によるものであると考えられる。しかし、特異的(杉)IgEの陽性率は大阪府下(23.0%)>国富町(19.3%)>大阪市内(15.3〜18.3%)の順となり、鼻アレルギー症状有症率の学校間の差は大気汚染によるものでなく杉花粉の飛散量により左右されることを示唆する結果を得た。
|