自律神経機能(活動)の非侵襲的検査である覚醒安静時の心拍間隔動揺の2つの周波数スペクトル成分(交感神経活動と心臓系副交感神経系活動にそれぞれ対応するMWSAとRSA成分)を用いる方法を中心に、ストレス負荷に対する生理反応の指標としての有用性を引き続き検討した。昨年実施した職域健診での調査を対象者を増やして再度実施し、データの再現性、スペクトル成分に変動を与える要因の検討を行った他、覚醒時には、安静といっても精神活動によるスペクトル成分への影響が無視し得ないことから、夜間睡眠中の睡眠段階応じたスペクトル成分の変動についての検討、を行った。前者では、新規の222名と今回も受診した者60名の男子計282名(21-49才)のデータを再解析した結果、心臓系副交感神経系活動(RSA成分)が加齢と同時に肥満と密接な関係にあることが示され、ストレスの評価をする場合には、肥満度を調整する必要のあることが再確認された。一方、後者では、睡眠中の自律神経機能のうち交感神経活動(MWSA成分)は睡眠中でも深睡眠時に対応して低下している傾向が明らかであり、同値が絶対安静時における自律神経活動に対応することが示唆された。覚醒時における安静状態と深睡眠時における絶対安静状態での自律神経活動の差は、慢性的なストレスの指標となる可能性があり、次年度さらに検討すべき課題と考えられた。さらに尿中カテコールアミンと上記2成分との関連についても検討し、現在結果の詳細を解析中である。
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