研究概要 |
赤血球を溶血させ血球基質とるには、5mMのpH80の燐酸ソーダ溶液で溶血させ、血球基質を洗滌するフェアバンクスの方法がよく、O型とA型の血球各10,000lから血球基質の湿量200mlが得られた。 1)血球基質から糖蛋白型物質を抽出する方法として、リチウム・ジヨードサリチル酸で可溶化後、50%フェノールで抽出するマッケンジ-の方法を追試したが、O型からのH活性、A型からのAとH活性はいずれも微弱であった。 2)胃粘膜から水溶性型物質を抽出する方法に従って、血球基質に直接90%フェノールを加えて抽出し、エタノール沈澱分画を得たが、抗H又は抗A凝集素に対する凝集阻止値は4倍で、極めて弱かった。 3)血球膜を可溶化してポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、染色したものを道しるべとして、Band3やBand4,5に相当する各分画ブロックを切りだし、生理的食塩水で抽出し、凝集素吸収試験で型活性を調べた。しかし、いずれの分画の型活性も微弱であった。 これまでに血球からABH活性糖蛋白を得たという報告は、生化学の専門分野からの報告であり、凝集阻止活性として比較できるように示されたものはなく、糖脂質との比較で活性を示したものも見あたらない。従って、活性が認められたとしても、これまで精製されと糖脂質または糖蛋白型物質に比較すれば微弱であったものと推定される。従って、これまでの常識のように、血球のABH血液型物質は、アルコール溶性の糖脂質が主であるとするのが妥当であるように思われる。血球表面に糖蛋白型物質が存在するとすれば、ルイヌ式血液型物質の様に、血清中のものが血球に吸着している可能性が強いのではないかと考えられる。
|