各種の肝疾患患者血清中に含まれるHGF産生誘導活性を測定したところ、急性肝炎および慢性肝炎患者において高い活性が認められた。HGF産生誘導活性は患者血清を培養MRC-5細胞に5%になるように添加し、その後24時間培養し培養上清中のHGF濃度を測定して求めた。正常ヒト血清および急性肝炎患者の血清をMRC-5細胞に添加し、6、12、24時間培養後、MRC-5細胞よりpoly(A+)RNAを調製し、ノーザンブロット解析を行いHGF mRNAを検出した。急性肝炎患者血清は正常ヒト血清に比してMRC-5細胞におけるHGF mRNAレベルを増加させ、その作用は24時間後に最大に達した。したがって本活性はHGF mRNAの発現を介して、HGF産生をもたらしていると考えられる。 また、HGF産生誘導活性の高い血清を集めてプール血清として、その血清のHGF産生誘導活性に及ぼすIL-I、IL-2、TNF-α、PMA、デキサメゾンの影響を検討したところ、IL-I、TNF-α、PMAとは相加的な作用がみられ、デキサメサゾンでは患者血清の活性は抑制された。したがって、HGF産生誘導活性はこれらの物質とは異なる物質であることが示唆される。さらに、血清を加熱処理、トリプシンやキモトリプシン処理を行うと活性が消失することから本活性はタンパク質性の物質であると考えられる。本研究により我々は各種の肝疾患患者血清中にはタンパク質性のHGF産生の調節因子が存在していることを明らかにした。現在さらに本因子の単離・精製について研究を継続中である。
|