研究概要 |
本研究は,呼吸器疾患の病態における接着分子の役割を解明し新しい治療法を開発することを目的とし,各種呼吸器疾患における接着分子の役割を明らかにするため培養細胞を用いたin vitroでの研究,動物モデルを用いたin vitroでの研究,各種呼吸器疾患について臨床検体を用いた研究,さらに,それらの結果を踏まえた新しい治療法の臨床応用とほぼ計画どおりに遂行され下記のごとき成果を得た. 1)ラットのエンドトキシン気管内注入による急性肺傷害モデルにおいて好中球の接着分子CD18に対する抗体が肺への好中球の浸潤を抑制しうるという知見をえ報告した. 2)サルコイドーシスや間質性肺炎などの呼吸器疾患において血中およびBALF中の可溶型接着分子ICAM-1を測定し,これが疾患の活動性を反映するよいマーカーとなることを見いだし報告した. 3)放射線肺臓炎の発症に接着分子のICAM-1が重要な役割を果たしているという知見を得て報告した. 4)in vitroの血管透過性測定システムにおいて好中球依存性の血管透過性亢進が接着分子抗体によって抑制されることを報告した. 5)IL-8による好中球の血管内皮細胞を介したtransmigrationのみでは血管透過性亢進は亢進しないが,TNFαなどのサイトカインとの共同作用によって血管透過性が亢進すること.この反応は,CD18に対する抗体で抑制されることを示し報告した. 6)気道上皮細胞,血管内皮細胞におけるTNFαによるICAM-1の発現刺激経路にオキシダントが関与し,アンチオキシダントであるN-アセチルシステインが抑制することを見いだし報告した. 7)接着分子発現を抑制しうる薬剤でありかつアンチオキシダントであるN-アセチルシステインの臨床的有用性を知るため,特発性間質性肺炎症例に吸入で用いその効果を検討中であり,成績の一部を報告した.
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