研究概要 |
多発性硬化症(MS)は神経難病の中で最も代表的な疾患で、その原因としてはウイルス感染、自己免疫異常、環境要因などの外因、遺伝的素因などが提唱されている。この疾患が世界的に北方圏の諸国で多発し、北緯42°〜46°に位置する北海道が本症の研究には最適な地域といえる。 北海道に在住のMS症例43例のHLA(Human leukocyte antigen)ハプトタイプを検討し、臨床経過中に急性横断性脊髄症(Acute transverse myelopathy、ATM)を呈する症例でHLA-DQw7がみられ、ATMを呈さない症例がDR4、DRw8を示すことを明らかにした。また、MS症例で対照に比べてDRw8とDRw52が有意に認められた。 MS脱髄巣にはリンパ球T細胞、macrophageの浸潤がみられ、その脱髄発症には組織特異的炎症反応がhoming receptorと接着因子とのinteractionにより起こると推測されることから、今回、chemo-attractant cytokines、chemokineの関与をMS患者および健常人のリンパ球で検索している。 MS症例の寛解期、増悪期、他の炎症性神経疾患、健常人の末梢血からFicoll Paque gradient遠心法でリンパ球を取り出し、48-well microchemotaxis chamberに種々の濃度のchemokineとリンバcell-suspension 50μlを入れ、90分incubation後、Diff-Quik(Travenol)染色を行うとともに、リンパ球のpenotypeをCD8,CD3、CD45R0、CD45RA抗原を用いて検討中である。 また、Human MIP-la immunoassay(Quantikine,R&D system)、Fluorokine MIP-la flow cytometory(R&D system)も着手している。 Chemokineに対する特異的なT細胞subsetを明らかにし、MSの病態、成因の解明を目指す。
|