本研究は本邦に存在する優性遺伝性脊髄小脳変性症の中で最も頻度が高い病型の一つであるMachado-Joseph病(以下MJD)の原因遺伝子を解明することを目的とした。 1.その第一歩として、われわれはまず栃木県、新潟県に存在するMJD家系の協力を得て、マイクロサテライトDNA多形を利用して、全ての常染色体をカバーする系統的なMJD遺伝子座の連鎖解析を行ってきた結果、MJDの遺伝子座が第14染色体長腕上に存在することを世界ではじめて明らかにした。すなわち、連鎖解析と家系における組換え例の検討からMJD遺伝子座はD14S53からD14S45の間の約29センチモルガン(cM)の領域に存在することが判明した。 2.そこで第二段階として、この候補領域をさらに絞り込むことを目的として、新たに開発されたマイクロサテライトDNA多形マーカーを用いたより詳細な連鎖解析、各家系における組換え例とhaplotypeの解析、および連鎖不平衡の解析を行ってきた。その結果、MJD遺伝子座は当初の想定よりtelomere側で、D14S81の近傍約10cMの領域に位置していることを明らかにした。 引き続き、現在はこの領域全体を酵母人工染色体を用いてクローニングすることを試みている。これからさらにcDNAを単離して、MJDの原因遺伝子であるか否かを一つ一つ検証していく計画である。また、MJD遺伝子もtrinucleotide repeatのexpansionを伴うものである可能性が高くなってきているので、repeatをプローブとした遺伝子クローニングも並行して行っている。
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