我々はMachado-Joseph病(MJD)の遺伝子座が第14染色体長腕上に位置することを見いだし、昨年度に報告した。今年度はこの候補領域をさらに狭めるために、より詳細な連鎖解析を行うことにより、家系各人のハプロタイプを決定し、発症者における組換え例を解析した結果、D14S81の周辺約4cMまで候補領域を絞り込んだ。外国のMJD家系についても、共同研究により遺伝子座は同一であることを確かめた。さらに、この領域を含む酵母人工染色体(YAC)を同定することにより、YACによるcontigを作成し、そこから機能的遺伝子を単離して、MJDの原因遺伝子であるか否かを検証することを試みた。一方、臨床的な観察から、MJDにはanti-cipationが認められることを確認した。この知見はMJDもtriplet repeatの異常な増大を伴う疾患であることを強く示唆したので、CAG repeatをプローブとして、上記のYAC由来のDNAから、CAG repeatをもつ遺伝子を同定することを並行して試みた。 平成6年11月、脳に発現していてCAG repeatを有する遺伝子の一つが14q32.1にマップされ、MJD患者ではこのrepeatの繰り返し回数が異常に増大していることが報告された。栃木県と新潟県に在住するMJD家系についてこの遺伝子におけるCAG repeatが患者では異常に増大しているか否かを検索した結果、患者全例でこの所見を確認した。さらに、多数例の解析から、この繰り返し回数とMJDの発症年齢は強い負の相関を示すこと、父方からMJDが伝播する場合にrepeatの繰り返し回数がより不安定となり、回数が増大するpaternal biasが存在することを認めた。
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