研究概要 |
本年度は伸展刺激による洞結節自動能亢進の機序を、とくに機械的伸展により活性化される細胞膜イオンチャネル、stretch activated(SA)channelの関与の観点から検討した。 〈方法〉家兎心臓から幅1.5mm、長さ3mmの洞結節組織片を分界稜に直角の方向に切り出し、32℃Krebs Ringer液による表面潅流下でmechanical stimulator(DPS-270)による伸展刺激(0.1〜2.0g、5秒間)を加えた。Modifide bipolar electrodeを用いて細胞外電位を高感度で増幅し、自発興奮間隔(SPCL)を測定した。組織の神経終末に内在する自律神経作動物質の影響を除外するためatropine(2μM)とprepranolol(0.6μM)を外液に添加した。SA channel阻害薬としては陽イオンチャネルブロッカーのgadolinium(Gd^<3+>)、陰イオンチャネルブロッカーである4,4'-dinitrostilbene、2.2-disulphonic acid(DNDS)、4-acetamide-4'-isothiocyanatostilbene-2,2'-disulphonic Acid(SITS)及びATP感受性K^+チャネルブロッカーであるglbenclamide(GC)を用いた。 〈結果〉無処理の標本(control)に対して0.2g以上の伸展を加えると、伸展刺激に応じてSPCLが短縮した。SPCL短縮から求めた自発興奮頻度(SR)の増加率と伸展張力の間には正の相関が認められた。Gd^<3+>(10〜50μM)とGC(1μM)は非伸展時のSRをほとんど変化させず、伸展時のSR増加にも影響を及ぼさなかった。DNDS(5mM)とSITS(1mM)は非伸展時のSRには影響を及ぼさなかったが、0.5g以上の伸展に対するSR増加を有意に抑制した。 〈結論〉機械的伸展による洞結節自動能亢進に対してDNDS、SITSが抑制効果を持つことからSA Cl^-チャネルがこの現象の発現に関与していることが示唆された。但し、伸展誘発の自動能亢進にはCl^-チャネルブロッカーでは抑制できない成分もあり、SA channel以外の機序も考慮する必要があると思われた。
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