研究概要 |
私共は内皮細胞が外的な力ではなくprotein kinase AとCによる細胞情報伝達系により、Cl^-チャンネルを介して自在に伸縮できることを見出した(Ueda,Circ Res 1980)。 内皮細胞のCl^-チャンネルはwhole-cell patch-clampとCl^-イオン蛍光指示薬SPQの単一細胞内濃度測定(Argus100CA)を用いて明らかにした。すなわち、cAMPやforskolinによるprotein kinase A(PKA)の活性化及びstaurosporineやH7によるprotein kinase C(PKC)の阻害が、部分的にCl^-チャンネルを抑制することで過分極を来たし、このためCl^- effluxを増加して細胞volumeを減少することを明らかにした(Circ.Res.1990.日循シンポ,1993)。また[Cl^-]濃度は、PKC阻害薬staurosporineにより8分で38±4mMより18mMに減少した。細胞内Ca^<2+>は、ionomycinでは早期に上昇したが、forskolinやstaurosporineは徐々に、わずかに200nM程度の低い上昇を示した。このCa^<2+>の上昇はEGTAにて阻止されることによりCa^<2+> influxによることを示す。volume減少はCl^- effluxとともに30分でコントロールの30%までの著しい減少を示した。また私共は内皮細胞がアデノシンA_1受容体を有し百日咳毒素感受性Gi蛋白を介して活性化されるCl^-チャンネルの存在を明らかにした(BBRC,1994)。 内皮細胞の伸縮性は、内皮細胞のCa^<2+>チャンネルやK^+チャンネル(Iks,IkCa)を活性化するmechanotransducerとして、極めて重要な意味を持ち、PGI_2とEDRFの産生分泌をコントロールすることもここに示した。Cl^-チャンネルを介した内皮細胞の伸縮機構が動脈硬化の発症に重要な役割を果たしていることを示唆する。
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