研究概要 |
平成6年度の研究を通して以下の研究成績が得られた. 1)アポトーシス抑制遺伝子産物のBcl-2およびアポトーシス媒介細胞膜分子としてのFas抗原のリンパ球,血液系細胞における発現とアポトーシス誘導の関係を検討した.伝染性単核症活性化T細胞と同様に,Bcl-2欠損ないし微弱発現は,顆粒球や単球のような半減期の短い白血球で観察された.Fas抗原は,活性化リンパ球のみならず、顆粒球や単球で構成的発現がみられ,Bcl-2微弱発現に対応して顆粒球や単球が抗Fas抗体によりアポトーシス死が促進された.この結果は,細胞におけるBcl-2発現の強弱が抗Fas抗体感受性に少なからず関与することを示すとともに,Fas抗原/リガンドシステムが免疫反応のみならず広く炎症に関わる血液系細胞をも標的として作用することを明かした(Blood 84:1201-1208,1994). 2)癌遺伝子産物のp53は細胞のアポトーシス誘導を促進する作用があり,点突然変異により生じた変異p53はその作用がなく,癌細胞の生成や不死化を導く.伝染性単核症活性化T細胞ではp53発現はないが,正常者リンパ球を放射線照射によりアポトーシス死を誘導した場合にp53発現がもたらされる.放射線照射性アポトーシスに付随したp53発現が,CD4^+T細胞,CD8^+T細胞やB細胞でみられるが,NK細胞やγδ型のT細胞抗原受容体をもつT細胞ではp53発現を伴わないことを示し,リンパ球のアポトーシス誘導に関わる細胞内条件としてのp53の役割に多様性のあることを明かにした(Eur.J.Immunol.24:2914-2917,1994). 3)伝染性単核症活性化T細胞を免疫原に得られた単クローン抗体IMN3.1抗体の認識する分子および遺伝子解析を進め,白血球共通抗原のCD45の特殊なアイソフォームの可能性をつかみ,T細胞活性化とアポトーシスにおけるIMN3.1発現の意義について検討中である.
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