我々の作成した血管内皮細胞特異的細胞間接着分子(血管内皮細胞カドヘリン)に対するモノクローナル抗体を硫酸アンモニウム沈澱法により濃縮精製した。この方法により濃縮された抗体はウェスタンブロット法により、活性が培養液上清原液に比べ約100倍上昇していることがわかった。その濃縮モノクローナル抗体を用いて血管内皮細胞カドヘリンの分布を調べた。血管内皮細胞カドヘリンは様々な臓器の血管内皮細胞間に強く発現していた。またこの抗体の機能阻害活性を利用してin vitroでの機能を調べた。一つは、抗体をマトリゲル上で培養した血管内皮細胞株に添加することにより、血管内皮細胞同士の接着がどのように変化するかを見る実験を行った。抗体を加えずに培養した細胞は細胞同士が三次元的に結合しながら増殖し、あたかも血管そのものであるかのように筒状の太いネットワークを形成した。一方、抗体を加えた細胞は細胞同士の接着も弱く、細かい網目状の二次元的なネットワークを形成した。二つ目の実験として血管内皮細胞をトランスウェルの上で培養し、抗体を添加した時としなかった時の細胞シートの上下間での透過性をHRPを用いて検討した。この結果、血管内皮細胞カドヘリンは血管内皮細胞間の物質透過性制御に関与していることがわかった。 次に血管内皮細胞カドヘリン分子の遺伝子構造を解明するために血管内皮細胞や組織のRNAから作成された数種類のcDNAライブラリーを濃縮精製した抗体を用いてスクリーニングした。現在までに血管内皮細胞カドヘリンの可能性があるクローンを得たので、今後このクローンの遺伝子配列を決定し、他のカドヘリンとの相同性を検討する予定である。
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