生体で臓器整合性を維持するには、細胞どうしの接着は必須の条件であり、この観点から、これまでに細胞接着に関与する多くの因子群が同定されてきた。カドヘリンスーパーファミリーは、それらの細胞接着因子の中でも主要な構成因子として知られている。一方、血管を構成する細胞群にあっても、多様な細胞接着因子の発現が様々な病態に関与することが知られてきたが、いまだに血管内皮細胞間特異的な接着因子は、その存在が強く予測されながらも、未固定のままであった。我々は、マウス皮膚由来の血管内皮細胞株をラットに免疫することにより、免疫に用いた血管内皮細胞株の接着を阻害し、かつ、特異的カルシウム依存性の細胞接着分子を認識する単クローン性抗体を作製した。この抗体は、分子量130KDaの蛋白を認識し、かつ細胞集合実験で、細胞間接着を特異的に阻害する。また、この抗体で認識される抗原は血管内皮細胞に特異的に発現されている。さらに、本抗体をもちいて、本抗体が認識する分子のcDNAを単離し、塩基配列を決定することにより、その分子と、これまでに報告されてきたカドヘリンファミリーとの相同性を検討したところ、本蛋白はカドヘリンファミリーに属す、あたらしい血管内皮細胞特異的カドヘリンであることが明らかとなった。さらに、この単クローン抗体をマウスに腹腔内投与したところ、血管の解離、血栓などが確認され、本蛋白は、培養系のみならず、生体にあっても、細胞接着の機能をつうじて、血管構築の維持に重要な役割を担うことを明かとした。
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