研究概要 |
表皮は細胞骨格、細胞間接着構造、細胞-基底膜間接着構造を介して互いにあるいは真皮と強靭に接着している。一方、これらの接着は創傷などの治癒過程(増殖と分化時)で形成と離開を繰り返す動的構造である。さて、通常表皮基底細胞は基底膜から離脱すると分裂しないし、基底膜に接していると角化しない。従って、基底膜との接着構造分子が分裂、分化の制御とそのシグナル伝達に関与している。その構造としてはhemidesmosomeがあり、分子としては180KD類天疱瘡抗原(BPA),230KD-BPA、各種のintegrinが知られているが、増殖と分化制御に関する機能についてはほとんど分かっていない。そこで、本年度は自己免疫疾患である表皮真皮境界接着障害を生じる類天疱瘡をモデルとして、180KD-BPA,230KD-BPA,α6β4 integrinに対するモノクローナル抗体を用いて、類天疱瘡抗体の培養表皮細胞おけるこれらの分子分布動態に与える影響を検索した。その結果、低Ca^<2+>培養状態から正常Ca^<2+>状態に培地Ca^<2+>濃度を変換すると、表皮細胞は一旦細胞底面のヘミデスモソーム構造を消失し、側方に移動して小コロニーを形成する。この実験系に類天疱瘡抗体、抗180KD-BPA抗体を添加すると、細胞膜表面の抗原は患者IgGと免疫複合体となって細胞内に取り込まれたが、230KD-BPA,β4 integrinは取り込まれなかった。また、細胞底面のヘミデスモソームの新生が阻害された。これらのことから、細胞内に取り込まれた180KD-BPA抗原は細胞側面のそれで、ヘミデスモソームのそれではないことが示唆された。一方、抗230KD-BPA抗体ではこれらの反応が惹起されないことから、類天疱瘡の発症は抗180KD-BPA-抗体によることが示唆される。さらに、180KD-BPAがヘミデスモソーム形成と構築保持に最も重要な役割を担っていることが推察される。これらの結果は新知見であり、Dermatology 1994,J Investgative Dermatolgy 1994に発表印刷中であり、米国研究皮膚科学会(1994)のシンポジュウムでの発表に採択されている。
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