テクネシウム(Tc)-99m標識抗CEA抗体、抗CA125抗体を用いて、それぞれ大腸癌、卵巣癌患者に投与。抗体の体内分布、腫瘍集積性を検討した。大腸癌では12例中11例に原発巣への取り込みが認められ、SPECTで求めた腫瘍/正常組織比と、実際に手術で得られた組織で求めた腫瘍/正常組織比とは極めてよく相関した。腫瘍/正常組織比が14倍を超えた症例も見られ、放射性同位元素で標識したモノクローナル抗体を用いた腫瘍特異的な治療への応用が期待される。卵巣癌でもこれまで実施した7例中3例に、投与した抗CA125抗体の腫瘍への集積が認められ、今後さらに症例を増やして検討する。 モノクローナル抗体の臨床応用に伴う最大の問題点は、抗体がマウス由来のため、投与した患者血中に抗マウス抗体(HAMA)を生じることである。遺伝子工学の手法を用いて、ヒト型抗体を作成し、その安全性を検討した。これまでの抗体では80%の症例の血中に抗マウス抗体が検出されたのに対し、Tc-99m標識ヒト型抗体を投与した患者血中には、抗マウス抗体はいずれも検出されなかった。本研究でヒト型抗体のTc-99m標識法を確立するとともに、その安全性を確認した。今後ヒト型抗体の画像診断、治療への応用が盛んになるものと思われる。 テクネシウム-99mは画像診断には理想的な核種であるが、癌の治療にはレニウム(Re)-186が優れている。そこで日本原子力研究所との協同研究によりモノクローナル抗体のレニウム-186標識を検討した。しかし標識率が低く、治療への応用にさらに検討が必要である。
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