研究概要 |
前年度(平成5年度)においてラットで肝癌モデルを作成し、リピオドールの^<131>I標識法を確立した。 本年度(平成6年度)において以下の検討を行ったので、その成績を概述する。 1.^<131>I標識リピオドールの性状:油性のものを水性ヨード造影剤とエマルジョンを作成し、光顕下にて、溶解性、粒状性、安定性、無菌性および貯蔵条件を検討した。ペ-パクトロトグラフィ,薄層クロマトグラフィなどの検討も含めて標識後1週間に亘って安定で、再現性もよく,生体内投与が可能と考えられた。 2.ウイスターラットを20週間DAB投与飼育して発症した肝細胞癌の担癌ラットを開腹後,胃・十二指腸動脈穿刺で肝動脈内に^<131>I標識リピオドールを投与して経時的に放射能量を全身、肝臓,腫瘍およびその他臓器毎に測定し,^<131>Iによる吸収線量を測定し、肝および腫瘍以外の全身各種臓器では吸収線量が極めて少なく,治療に際しての障害は避け得るものと考えられた。 肝臓(腫瘍を含む)は40〜50μの厚さに切片を作りオートラジオグラフィを実施して,その分布から正常肝臓部と腫瘍部の吸収線量を夫々算出した。これまで腫瘍部には正常臓器(肝)の10乃至20倍を越える吸収線量が得られたが、変動が大きく,更に今後検討を要する。 治療効果に関しては、腫瘍部に壊死を生じた効果例、あるいは光顕的に変性所見がみられて効果が示唆されたが,変化に乏しい例もあり,投与量,分布比率と効果の関係に関してはなお症例を重ねる必要があると考えられた。 担癌モデル動物の作成が20乃至25週間と比較的長期間を要し,さらに投与に際して血行動態あるいはエマルジョンの変化によると思われる薬剤の血管内貯溜などから動物の死亡などによるロスが大きく,予定通り平成6年度末までに結論がでず,今後更に統計処理可能な症例を重ねて結論を得たい。
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