本年度は放射線医学総合研究所において、Gyroscan S-15(Philips社)を使用し、Phase-Contrast Cine MRIを用いた方法について、4名のボランティア(平均年齢30.3歳)を測定し、基礎的データ収集を行った。 頭部のプロトン密度強調画像を7mm間隔で14断面撮影し、両側内頸動脈と脳底動脈がflow voidとなる断面を選び、同一断面で、水平断面に対してPhase-Contrast Cine MRIを行った。スキャンの条件は、Matrix:256x256、Average:2、TR=49msec、TE=13msec、flip angle=45°、FOV=300mm、slice:7mm、scan time=18′02″である。両側内頸動脈と脳底動脈に相当する部位にROIを設定し、流速を測定した。現在使用しているMRI装置ではR波から80msecまでしか実測できないことから、それ以降の測定できない区間は流量が直線的に変化すると仮定して、平均流量を求めた。全脳の体積はスライスごとに抽出されている脳の面積を求め、その和とスライス厚の積として算出した。このふたつの値から、平均脳血流量を求めた。平均値で、全脳血流量が1048ml/min、全脳体積が1329cm^3、このふたつの値から算出される平均脳血流量は78.7ml/min/100cm^3であった。 我々の得た値は、Marksらのデータと比較するとやや高めの値ではあるが、近似的な値であり、今回行った方法が妥当であろうと推測される。しかし、今回用いたMRI装置が、R-R間隔を全体的にスキャンできる装備がないために精度の低下をまねいていること、グラジエントの限界のためにFOVを小さくできないこと、およびPhase-contrastのグラジエントも強くかけられなかったため、空間分解能の低下、流量測定の誤差の増大などを認めること、などの問題点をもつことが明かとなった。来年度は本法を更に簡便にし、精度を向上させ、臨床的に応用可能な方法の確立をめざしたい。
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