研究概要 |
1.Epoxide hydrolase活性 肝臓から抽出したepoxide hydrolase(EH)活性に対する各種抗てんかん薬(AED)の効果を検討した結果、valproate(VPA)は治療濃度でEH活性を抑制するが、zonisamide(ZNS),phenobarbital(PB),carbamazepine(CBZ)には抑制効果はなく、phenytoin(PHT)はEH活性を軽度抑制した。 EH活性を規定する遺伝子と奇形発現の関連を検討するため、同じ両親から出生し、しかも奇形を有する子どもと奇形のない子どものいる5家系を集め、DNAを抽出し、EH geneを米国と共同で検索中である。 2.Clutathione-S-transferase(GSTs)活性 肝臓から抽出したGSTの各種isozymeに対する効果を検討した結果、治療濃度のPHT,PB,CBZ,ZNSは検討したすべてのGSTs(1-1,2-2,3-3,4-4,7-7)活性を抑制しなかった。高濃度(治療濃度の10倍)では、PHTはGST1-1,7-7を抑制し、PBはGST3-3のみを抑制した。VPAはGST3-3以外を濃度依存性に抑制した。 3.抗てんかん薬によるEH,GSTs抑制の意義 VPAによるEH,GSTs活性抑制は毒性を有するAED代謝産物(ex:epoxides)の解毒過程を抑制し、結果として毒性が高まり、奇形発現に至るものと考えられる。この結果はVPAとCBZ併用による箸しい頻度の奇形発現はVPAがCBZのepoxides分解を抑制し、CBZはVPAから4-en VPAへの代謝を促進することが関与する可能性を示し、一方、各個体の薬物代謝能力(EH活性、GSTs活性)を規定する遺伝要因も奇形発現に関与することを示す。
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