研究概要 |
てんかん女性の児に高頻度に認められる先天性奇形は親のテンカン(の遺伝子)より、抗てんかん薬(AED)により規定される可能性が高いことを明らかにした。主なAED催奇性はprimidone(PRM),valproate(VPA),phenytoin(PHT)の順で高く、AEDを併用すると奇形発現頻度は増加する。Mephobarbital の入った多剤併用、VPA+CBZ,PHT+PRMの併用で奇形発現が著しく増加する。AEDによる奇形発現機序としてPHT,PBC,CBZ,PRMなどの併用でAEDの活性代謝産物は増加し、VPAは解毒に関わる酵素(epoxidehydrolase,glutathione S-transferaseなど)活性を濃度依存性に抑制することを明らかにした。児のAEDの代謝酵素(P-450など)活性と解毒に関わる酵素(epoxidehydrolase,glutathione S-transferase,P-53など)活性は遺伝的に規定されているため、児のこれらの酵素活性が妊娠初期に判明すると奇形発現の予測が可能となる。この問題は、現在、米国と共同研究中であり、今後も検討すべき課題である。妊娠初期にAEDを中断、もしくは妊娠前から断薬可能な症例を判定することが重要なため、てんかんの予後、断薬の基準などについても検討したが、成人に関しての信頼性のある基準設定は困難であった。機能的奇形に関しては、動物を用いてAEDの神経伝達系への効果も検討しているが、臨床で使用されてきたテストバッテリ-が十分な感度がないために児の精神運動発達上の欠陥をとらえ切れていない可能性があることを指摘した。 以上の結果をもとに、妊娠可能女性てんかん患者の治療指針を提案した。
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