研究概要 |
ヒト大脳コレシストキニン(CCK)-B受容体は胃ガストリン受容体と同一分子であるが、細胞増殖促進作用のみならず細胞骨格再構成能を持つことを明らかにした。ヒト第11番染色体短腕15.5-15.4の全長13kb以上におよぶ5個のエクソンから成るヒトCCK-B/ガストリン受容体遺伝子は、第4エクソンの3′側に2ヵ所のスプライシング部位をもち、2種類の受容体アイソフォームを発現しうるが、ヒト組織においては5'部位において優位にスプラインされることを明らかにした。各受容体アイソフォームの機能差の有無について受容体cDNA導入発現細胞を用いて検討した。いずれの受容体においてもCCKおよびガストリンはDNA合成を促進させるとともに、c-fos,c-myc,c-junなどの初期応答遺伝子発現を誘導する。さらにイノシトールリン酸産生や細胞内Ca^<2+>を上昇させるのみならず、MAPキナーゼなどの細胞質蛋白チロシンリン酸化を誘導し、チロシンキナーゼ型受容体の細胞内信号伝達系とクロストークする可能性が示唆された。さらに、チロシンキナーゼ型受容体との共役がすでに明らかにされているその他の細胞内情報伝達分子(Ras,Rhoなどの低分子量G蛋白,Srcなどの非受容体型チロシンキナーゼ)との共役もみいだされ、アクチンストレスファイバー再構築にはRhoが関与していることをを見い出した。また、CCK-B/ガストリン受容体遺伝子ノックアウトマウスを作成にも成功した。中枢神経系における発現については、マストミスを用いたin situハイブリダイゼーション法にてその局在を詳細に検討し、本受容体発現が大脳皮質、特に錐体細胞に最も強く発現していることを明らかにした。また、臭球や海馬、扁桃核、尾状核・被蓋、網状視床核、視床下部腹側正中核などにおいても領域特異的な発現が認められることを報告した。さらにヒトCCK-B/ガストリン受容体特異的な拮抗薬をも見い出した。
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