動脈硬化の危険因子としての高脂血症素因、特にアポリポ蛋白の変異に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454325
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 山村 卓 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (20132938)
• 研究分担者: 丸山 貴生 国立循環器病センター研究所, 病因部, レジデント研究員 ; 三宅 康子 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (00132936)
• キーワード: アポリポ蛋白 / LDL受容体 / 高脂血症 / 動脈硬化症 / リポ蛋白

研究概要

1.変異アポEに関する検討: 一般健常日本人、1,101例においてアポE同位体を分析し、アポE表現型分布と、これから計算したアポE遺伝子頻度を求めた。野性型のε3(アポE3)が0.852と最も高頻度にみられ、次いで、ε4=0.093、ε2=0.050と続く。ε7とε5の日本人の特異的なアポE遺伝子頻度は、それぞれ、0.002、0.003であった。心筋梗塞症例では、ε4の高頻度とε2の低頻度が認められた。また、変異アポE(E7・E5)も高頻度に認められ、虚血性心疾患のリスクになっているものと考えられた。
2.Lp(a)の分子多形に関する検討: 動脈硬化の危険因子としての高Lp(a)血症の体質素因について検討した。家系調査の結果、同一家系内ではLp(a)表現型と血清濃度はよく一致した結果が得られた。しかし、家系が異なると、同じLp(a)表現型であっても血清濃度にはかなりの差が認められた。アポE表現型と血清Lp(a)濃度の関係を小・中学生で検討した。E4/3表現型で高く、E3/2表現型で低い傾向にあった。
3.LDLとアポBの異常: 高脂血症患者のLDLについて、正常LDL受容体に対する結合活性を測定した。多数の高脂血症症例における分析から、高トリグリセライド(TG)血症患者のLDLは、その程度に応じて粒子サイズの小径化とLDL受容体結合活性の低下が認められた。この異常は薬物療法による高脂血症の改善に伴って回復し、高TG血症治療の重要性が示された。
4.アポA-Iに関する検討: ウサギ血清からアポA-IとアポEを精製してHDLを人為的に作成し、これをコレステロール負荷ウサギに投与することによって動脈硬化の進展に及ぼす影響を検討した。大動脈壁の脂質含量や脂肪班は、HDL投与群で減少傾向を示したが、有意なものではなく、本来、HDLの補充による動脈硬化抑制作用はあまり強くないことが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Mezdour, H.: "Exogeneous supply of artificial lipoproteins does not decrease susceptibility to atherosclerosis in cholesterol-fed rabbits." Atherosclerosis. 113. 237-246 (1995)
• [文献書誌] 山村 卓: "家族性III型高脂血症" 医学のあゆみ. 172. 276-280 (1995)
• [文献書誌] 山村 卓: "電気泳動法一等電点電気泳動法" The Lipid. 6. 237-243 (1995)
• [文献書誌] Maruyama, T: "Common mutations in the low-density-lipoprotein-receptor gene causing familial hypercholesterolemia in the Japanese population." Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.15. 1713-1718 (1995)
• [文献書誌] Harada- Shiba, M: "Kinetic analysis of cholesterol and Lp (a) using the rebound curve after LDL-apheresis" Jpn. J. Apheresis. 15. 96-97 (1995)
• [文献書誌] 山村 卓: "アポC-II異常に伴う高トリグリセライド血症-家族性C-II欠損症" 臨床検査. 39. 1191-1194 (1995)
• [文献書誌] 山村 卓: "最新内科学大系 第9巻「高脂血症・低脂血症」「III型高リポ蛋白血症」を分担" 中山書店, 372(82-98) (1995)
• [文献書誌] 山村 卓: "「遺伝子病マニュアル・上」「アポE異常症」を分担" 中山書店, 425(174-175) (1995)