研究課題
心筋梗塞などの重篤な臓器障害につながる動脈硬化の成因を血漿リポ蛋白異常の面から究明し、その遺伝素因を逐一解明することを目的として研究を行い、以下の結果を得た。1.家族性高コレステロール血症(FH)におけるLDLレセプター機能異常の解析:FHホモ接合体の線維芽細胞について醋酸からのコレステロール(Ch)合成とヒドメキシメチルグルタリルCoA還元酵素活性を測定し、Ch合成に対する甲状腺ホルモン(T_3)の影響を観察した。LDLレセプター機能が僅かでも残っているdefectiveなタイプと対照的に、レセプターを完全に欠くnegativeタイプではT_3添加によってCh合成が著明に促進された。このことは両タイプのFH患者のCh合成阻害薬に対する反応性の違いに関連すると共に、negativeタイプではCh合成に歯止めがかからず、粥状硬化が進展する原因となっていると推定された。2.高脂血症に伴うアポリポ蛋白異常について:FHのモデル動物であるWHHL兎において、食餌性の高脂血症では見られないアポA-IとA-IVの著明な減少があり、これがChの逆転送効率の低下を通じてFHにおける粥状動脈硬化の進展に大きく寄与している可能性が示唆された。3.高トリグリセライド(TG)血症の原因としてのリポ蛋白リパーゼ(LPL)と肝性トリグリセライドリパーゼ(HTGL)欠損症:原発性IV型高脂血症患者を対象としてヘパリン静注後血漿(PHP)中のLPL蛋白質量の測定、糖負荷試験、飲酒量の聞き取り調査を行い、内因性高TG血症の発症にはLPL低値に加えて飲酒と高インスリン血の関与することが明らかになった。また糖尿病を伴う高TG血症患者の中にも既知のLPL遺伝子異常(LPLarita)を高頻度に発見した。HTGL欠損症においては、増加したTGは主にLDLとHDL分画に分布し、健常者、高TG血症患者を通じて、PHP中のHTGL量とLDL-TG、HDL-TGの間に強い相関が見出された。