研究課題
一般研究(B)
心筋梗塞などの重篤な臓器障害につながる動脈硬化の成因解明を目的として、血漿リポ蛋白異常の遺伝素因の解析を行い、以下の結果を得た。1)家族性高コレステロール血症(FH)とその類縁疾患におけるLDLレセプター異常の解析:24家系のホモ接合体のうち7家系においてイントロン12のsplice donor siteの一塩基置換を検出、この変異は互いに血縁関係のないヘテロ接合体の中でも15%の高頻度に見出され、日本人に特徴的な変異として同定された。また大きな欠失をもつ3例はいずれもAlu-Alu recombinationによっておこったものと推定された。この他FHホモ接合体の病態をとりながら線維芽細胞や白血球のLDレセプターにも、LDLにも異常のない一家系があり、原因を検索中である。2)高脂血症に伴うアポリポ蛋白異常についての研究:(a)臨床的にFHと診断された症例の中に、LDレセプターに異常なく、LDLの健常線維芽細胞への親和製が正常の50%に低下している一症例を発見した。欧米で検出される3500番目のアミノ酸には異常なく、現在遺伝子レベルの検索を続けている。(b)FHの疾患モデル動物であるWHHL兎についての研究で、食餌性の高脂血症にはみられないアポA-IとアポA-IVの著明な減少を見出した。これはFHにおけるコレステロール逆転送効率の低下と、これに伴う動脈硬化の進展につながる大きな原因と考えられる。3)高トリグリセライド血症の成因に関する研究:(a)リポ蛋白リパーゼ(LpL)欠損のホモ接合体は家族性高カイロマイクロン血症の原因として有名であるが、IV型高脂血症(内因性高トリグリセライド血症)の中にも高頻度にLpL欠損がヘテロ接合体の型で検出された。多変量解析の結果LpL遺伝子異常に加えて飲酒と耐糖能低下が共軛して働いていることが実証された。(b)肝性トリグリセライドリパーゼ欠損症を同定し、特異な病態としてトリグリセライド rich LDLの存在を確認した。
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