分化型造血器腫瘍である骨髄腫において、その骨髄中の骨髄腫細胞は不均一である。その不均一性は接着分子MPC-1およびVLA-5の発現により明瞭に識別できた。つまり、VLA-5^-MPC-1^-の未熟骨髄腫細胞、VLA-5^-MPC-1^+の中間型骨髄腫細胞およびVLA-5^+MPC-1^+の成熟骨髄腫細胞に分けられ、形態学的にもよく対応していた。未熟骨髄腫細胞は増殖因子インターロイキン6(IL-6)に反応して増殖するが、成熟骨髄腫細胞はほとんど増殖能がなかった。骨髄腫における腫瘍前駆細胞は未熟骨髄腫細胞に相当すると考えられた。分化の方向性を確認するために、正常形質細胞の骨髄での分化過程を検討した。末梢血中に認められる骨髄に入るべく運命付けられた前駆形質細胞を分取し、in vitroで骨髄ストローマ細胞と共培養すると成熟形質細胞へと分化できた。この分化過程において、骨髄ストローマ細胞から産生されるIL-6が前駆(未熟)形質細胞のアポトーシスを抑制して分化を規定していることが分った。更に、前駆(未熟)形質細胞がIL-6によって分化する時に接着分子MPC-1が早期に誘導された。つまり、IL-6による分化誘導はまずMPC-1遺伝子の発現誘導を引き起こすことを示唆した。未熟骨髄腫細胞は骨髄腫前駆細胞と考えられ、IL-6による分化誘導がうまくゆかず増殖因子としてIL-6に反応する。従って、IL-6によるMPC-1遺伝子の発現誘導機構の解明は未熟骨髄腫細胞の分化異常を明らかにする上で極めて重要である。MPC-1遺伝子の発現機構を解明するべく、現在MPC-1遺伝子cDNAのクローニングを進行中である。
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