研究概要 |
われわれは、新規の増殖因子を探索する目的で血液幹細胞に発現される受容体型チロシンキナーゼの同定を行った。RT-PCR法により以下の受容体がクローニングされ、それぞれ解析を進めた。 1)STK/RON:Hepatocyte Growth Factor(HGF)の受容体であるc-metに類似した受容体で、35kDaα鎖と、キナーゼドメインをもつ140kDaβ鎖のヘテロダイマーからなる。 キナーゼドメインの自己リン酸化、および結合反応より、macrophage stimulating protein(MSP)が結合因子であることがあきらかになった。STKに対する抗体を作成して、FACS,免疫染色により検討したところ、腹腔マクロファージ、破骨細胞、赤血球細胞株に発現していることが明らかとなった。MSPのin vitroにおける幹細胞への作用は現在のところ、明かにできていない。 2)TIE及びTEK:細胞外に免疫グロブリン、EGF,フィブロネクチン様構造をもつ受容体型チロシンキナーゼである。TIEに対するモノクローナル抗体を作成して、FACSによる検討をすると,TIEは、CD34陽性細胞(なかでも、CD38陰性の未分化幹細胞)、CD19,CD20陽性のB細胞に発現していることが明らかとなった。この結合因子は、幹細胞に作用すると考えられるが、まだ同定できていない。 3)HTK:HTKは、Ephファミリーに属する。その多くは、神経細胞に陽性優勢に発現しているが、HTKは、例外的で、CD34陽性細胞に発現していることを明かにした。さらに、結合因子を、同定することができたが、生理活性に関しては、これから検討の予定である。
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