研究概要 |
研究は当初の計画に従って、骨髄、末梢血あるいは臍帯血より比重遠心法により単核細胞を採取し、付着細胞、SBA陽性細胞を除去し部分純化した。得られた細胞をCD34,HLA-DR,c-kit,CD38,CD33等の抗原に対するモノクローナル抗体で二重染色し、CD34^+細胞をこれらの抗原の発現の有無によりソーテイングし亜分画した。今年度は、まず連続血球分離装置(CS-3000)を用いたapheresisにより採取した末梢血由来のCD34^+細胞の幹細胞特性について検討した。末梢血由来のCD34^+細胞の大半がHLA-DR,CD33,CD38抗原を発現していた。一方、c-kitの発現率は20-30%であり、骨髄、臍帯血に比べて低値を示した。CD34^+DR^+,CD34^+CD38^+あるいはCD34^+c-kit^+細胞分画にはすべての前駆細胞が濃縮されていた。一方、CD34^+DR^-,CD34^+c-kit^-細胞のコロニー形成率は低値を示した。特に,CD34^+CD38^-細胞分画にはコロニー形成細胞をほとんど認めなかった。これに対して、CD34^+CD33^+細胞分画にはCFU-GMが濃縮されていた。CD34^+細胞をc-kitの発現レベルにより亜分画すると、CD34^+c-kit^<high>分画にBFU-E,E-Mixが濃縮され、一方、CD34^+c-kit^<low>分画にはCFU-Megを含むすべての前駆細胞が濃縮されていた。以上より、末梢血幹細胞の特性は、骨髄、臍帯血と異なっていると考えられる。現在、ヒト骨髄よりストローマ細胞を形成し、長期液体培養系におけるLTCICの定量を試みている。また、純化幹細胞のコミットメントにおけるTGFbetaやRb、p53などの癌抑制遺伝子の関与について、これらの遺伝子に対するホスホロチオエート型アンチセンスDNA分子を合成し、無血清培養下でその作用について検討を加えている。
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