研究概要 |
造血器腫瘍では染色体異常,特に染色体転座が多く観察され、病型や病態との相関が強く認められる。これら染色体転座の結果、活性化される遺伝子やその遺伝子異常の研究は発癌機構の解明,並びに臨床診断に直接つながる可能性が高い。申請者らは染色体11番長腕(11q)に高頻度に認められる11q13及び11q23領域の遺伝子の造血器腫瘍における役割を検討し、その臨床応用を目的とした研究を行った。 この3年間に11q13領域に関しては、マントル細胞リンパ腫のvariant型転座症例の解析から、PRAD1/Cyclin D1遺伝子がBCL-1遺伝子であることを証明した。また、リコンビナント遺伝子産物にて作製した5D4モノクローナル抗体により、マントル細胞リンパ腫では特異的に核が染色されることを見い出した。本抗体を用い臨床症例を検索した結果、典型的マントル細胞リンパ腫の予後が極めて不良であることを明らかとした。 11q23領域より単離したMLL遺伝子に関しては、本遺伝子は乳児白血病に加えて化学療法剤,特にトポイソメラーゼ阻害剤などによる二次性白血病の標的遺伝子であることを明らかにした。転座切断点におけるRT-PCR法を確立し、微小残存腫瘍の同定を可能にし、臨床導入した。更に、機能解析の一助としてMLL遺伝子産物に対する抗体を作製した結果、正常及びキメラ MLL遺伝子産物は核内に局在すること。増殖性や造腫瘍性には、MLLのZnフィンガー領域より、N末端が関与していることを明らかにした。また、トランスジェエックマウスを作出して、1年以上経過観察中である。現在のところ白血病の発生は認めていない。
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