研究概要 |
平成7年度は本研究の最終年度に当るため、これまでの成果をふまえて本研究課題が目的とした事項についての集大成を行い、その結果以下に記す3つの総括的な成果を得た。 1.免疫グロブリン産生に関与するサイトカインの同定 慢性腎炎の中でわが国において最大頻度を占めているIgA腎症では患者のIgA産生能が亢進しているが、その機希は現在まで不明であった。患者のリンパ球におけるサイトカイン発現を多くの物質について検討した結果、IL-4とSCD23とがin vitroとin vivoの両方でIgAの産生に強く関与していることが明らかとなった。 2.コラーゲン代詞因子の関与 腎炎における慢性的な腎機能低下の主要原因である糸球体メサンギウム領域の拡大の中心的物質であるTV型コラーゲンとその分解酸素(MMP3)およびその抑制物質(TIMP-1)の腎生検組織上でのmRNA発現をin situ hybridization法によって検討した結果、IgA腎症では組織障害の進度に伴ってこれらの遺伝子発現が活性化することが示された。 3.サイトカイン関与状況の集大成 各種の慢性糸球体腎炎におけるサイトカインの関与を包括的に解析した結果、対象としたサイトカインIL-1,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10,IL-12,INF-γ,TGF-β,TNF-α,PDGFおよびMCP-1のうち、長期にわたる進行性の糸球体硬化にはIL-4,IL-12およびIFN-γが強く関与していることが明らかとなった。 以上の成績から、これまで不明であった慢性糸球体腎炎の進展においてどのようなサイトカインがどの時期に関与しているかが具体的に示された。今後はこれらの結果をふまえて糸球体と問冥の相互作用における分子的塁率を解析することが、糸球体硬化の機希解明上重要と思われる。
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