研究概要 |
虚血性脳損傷とその修復に及ぼす各種神経栄養因子のうち,ニューロンで産生される一酸化炭素(NO)の役割についてin vivoマイクロダイアリシス法を用いて検討した. 研究方法:実験動物として日齢7のSprague-Dawley系ラットを用い,ウレタン麻酔下でマイクロダイアリシスプローブ(CMA11)を線条体に挿入し,プローブはリンゲル液で潅流した.実験は低酸素負荷のみのコントロール群とNO合成基質であるL-アルギニンを投与した群とNO合成阻害剤であるN-nitro-L-arginine methylester(L-NAME)を投与した群の3群に分けて行った.挿入後2時間安定化させた後,1時間の低酸素負荷(8%酸素)とさらに1時間,21%酸素による再酸素化を行った.薬物投与群では潅流液に各々100μg/dlの濃度になるように溶解し,低酸素負荷30分前より負荷期間中,プローブを通じて線条体に局所投与を行った.10分毎に潅流液を回収して細胞外液のドパミンとその代謝産物であるDihydroxy-pnenylacetic acid(DOPAC),Homovanillic acid(HVA)の濃度をHPLC-electro-chemical法により測定した。 結果:コントロール群では細胞外ドパミンの濃度は低酸素負荷60分後には負荷前の2.4倍に増加するが,再酸素化によりほぼ前値にまで回復した.L-アルギニン投与群では低酸素負荷によるドパミン濃度の増加率は2.3倍とコントロール群と差がなかったが,L-NAME投与群では1.4倍の増加しなかった.低酸素負荷によってラット新生仔線条体での細胞外のドパミン濃度は一過性に増加し,代謝産物の濃度は低下するが,NO合成阻害剤によって低酸素に伴う細胞外ドパミン濃度の増加が有意に抑制されたことより,ドパミン代謝の低酸素変化にNOが関与していることが示唆された.
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