平成6年度までの研究の経過 1)in vitro a)ELISAでTSST-1を検出することができ、他の外毒素との交差反応はなかった。 定量限界はほぼ50pg/mlと考えられた。 b)TSST-1産生の黄色ブドウ球菌の培養液中にTSST-1を定量することが可能であった。 c)human peripheral mononuclear cellの培養液にTSST-1を添加すると、濃度依存性にTumornecrosis factor-αを産生したが、エンドトキシンに比較し、高濃度を要した。 またエンドトキシンとの相乗作用を示した。 2)in vivo a)家兎にTSST-1の精製品(1μg/kg)を静脈注射後、経時的に血中濃度を測定すると、血中のTSST-1濃度は60分でほぼ消失し、そのclearanceはかなり速かった。 b)TSST-1静脈注入後の循環動態の変化を調べると、血圧、心拍出量は徐々に減少し、controlと有意差(P<0.05)を認めた。体温は徐々に上昇したが、有意差はなかった。 c)TSST-1産生の黄色ブドウ球菌を静脈注射後その血中生菌数の変化とTSST-1濃度を測定したが、TSST-1濃度は検出限界以下であった。これらの家兎の循環動態はコントロールと有意差を認めなかった。しかし、持続的に低濃度のTSST-1を産生しているものもあった。 3)臨床検体の測定 a)エンドトキシン血症を疑った重傷感染症における血中TSST-1濃度を測定した。44例54検体中TSST-1陽性は20検体であった。エンドトキシン陽性のものは有意にTSST-1の値が陰性のものに比較して高値であった(P<0.05)。 b)透析患者における透析中の血中TSST-1濃度、抗TSST-1抗体濃度を測定した。 TSST-1はすべて陰性であった。抗TSST-1抗体は一定の傾向を認めず透析患者へのTSST-1の関与は否定的であった。 平成6年度の研究の評価 血中のTSST-1が検出されるには持続的なTSST-1産生菌の重症感染が必要と考えられた。またTSST-1のclearanceについては血液中の不活性化か、循環血液外への移行あるいは排出か検討が必要と考えられた。循環動態の悪化は大量のTSST-1に暴露されないと起こらないと考えられた。臨床例では実験で証明した様にTSST-1はエンドトキシンとの相乗作用をきたして病態の悪化をきたしていると考えられた。
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