1)複合培養皮膚のin vitroにおける表皮細胞の分化ならびに基底膜成分について酵素抗体法および電子顕微鏡的に検討した。各種抗ケラチン抗体を用いた酵素抗体法による染色の結果、K1ケラチンは上部で陽性、K8ケラチンは陰性であった。抗タイプIIケラチンに対する染色パターンは正常皮膚と変わらなった。電子顕微鏡による観察では、ケラトヒアリン顆粒、デスモゾーム、ヘミデスモゾーム、Lamina densaなど正常皮膚構造類似の構築が認められた。これらにより複合培養皮膚は正常皮膚に類似した基底膜構造と表皮層の分化をもっていると考えられ、臨床応用における有用性と実験モデルとしての価値が示唆された。 2)複合培養皮膚、表皮細胞を含まず線維芽細胞のみを含んだコラーゲンスポンジ、および単なるコラーゲンスポンジをヌードマウス背部の皮膚全層欠損創に移植し生着性を検討した。複合培養皮膚使用部が最も速く上皮化し、線維芽細胞のみを含むコラーゲンスポンジがこれに次いだ。複合培養皮膚の臨床応用に展望が開けるとともに線維芽細胞のみを含む材料の今後の応用の可能性も示唆された。プログラムフリーザ-による凍結保存したコラーゲンスポンジでも生着を認めた。 3)複合培養皮膚のプロトタイプである「2層性人工皮膚」を臨床使用後、長期経過した部位について走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて超微細構造を観察した。また各種特殊染色および酵素抗体法を用いて主にコラーゲン繊維、弾性繊維の構築を観察した。この結果「2層性人工皮膚」により新生された組織は瘢痕よりもむしろ正常真皮に類似した構造を示すことが判明した。
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